お茶の水女子大学附属図書館のLiSA(Library Student Assistant)の活動ブログです。LiSAは、LiSAメンバーと図書館スタッフの協働による図書館活性化のための活動です。
美術品のお医者さん
2009年11月28日 (土) | 編集 |
MMCのおくだです。

本学の木戸孝允肖像画が現在、憲政記念館に出張中なのは、
以前、お見送りをしたヒョードーさんからご報告があったとおりです。

貴重な資料の貸借の際に、双方でその時点での資料の状態確認をするのはとても大切なことなのですが、今回、いつもの展示ケースからはずされ、久しぶりに間近に見た肖像画、
昨年8月の寄贈レセプションで皆に見守られながら梱包を解かれ、そのまま壁にかけられたときには気づかなかった、いくつかの気になる点が出てきました。

・肖像画裏面の木枠につけられた吊り下げフックが、不都合な形で留められているように見える。
・壁側のフックも、釘の打ち込み具合がよくない。
・額縁の金の塗装の上に、若干の白い付着物がある。
・キャンバスが額縁からやや下がって見える。

これらはこうして壁からおろして、近くで改めてじっくり観察しなければわからなかったことですので、
このたびのお出かけは、資料の再点検という意味でも、大変よい機会でした。

さて、「病気」というわけでもありませんが、体調にちょっと気になる点が出てきたら、
素人療法はさておいて、やっぱりお医者様にご相談するのが一番です。
ということで、本学に寄贈される前に、この肖像画の修復を担当してくださった
吉備国際大学文化財学部長で、絵画修復家の大原秀之先生にさっそくおうかがいしてみました。
先生はまさに、「うちの」木戸孝允肖像画の主治医です。

先生は「僕も久しぶりに会いたいです。」と快諾、さっそく様子を見に来てくださることになりました。
本当に心強くありがたいことです。
肖像画は展示にそなえて憲政記念館に宿泊中なので、同館の担当者の方のご協力をえて、
特別展に先立つとある1日、同館の1室で先生のご診察を受けました。

まず全身観察をしてから、個別にチェック(人間ドックみたいなもの?)。
裏面のフックは吉備国際大学で修復を行う前から付けられていたもので、やはりあまり都合がよろしくないという先生のお見立てにより、全面的に付け替えることに。
まったく素人の私は、ネジを取り替えればいいのかな、くらいに考えていたのですが、
実に念入りな観察のもと、木枠の強度はもちろんのこと、壁にかけたときの厚みだとか、
横から金具が見えないようにだとか、それはもう慎重に検討して、
まずそれを私に丁寧にご説明してくださいます(インフォームド・コンセントってやつ?)。

それから思いのほかの、大手術の始まり。
肖像画の描かれたキャンバス自体は、木枠からはずされ、しばし静養。
助手の方がご一緒にいらして、てきぱきと先生のご指示に従い、お手伝いされていました。
(看護師さんか、はたまた研修医か?)
「メス!」「はいっ!(ピシッ)」って感じで、「定規!」「はいっ!」、「ネジ回し!」「はいっ!」、
「ここ押さえてて」「はいっ!」
…感動しました。(ちょっと私、医療ドラマの見すぎかもしれませんけど。)

はじめに補強用に、適正サイズにカットした木片を木枠に接着剤で留め、乾くまでしばらく待つ。

木片

補強用の木片に金具をネジ留めするため、ドリルで誘導穴を開ける大原先生の勇姿。

ドリル

2種類のネジで新しいフックをしっかり固定。これでもう安心。

新フック

額縁の付着物を除去して、丁寧に補彩。

補彩

美しく整えられた額縁に、改めて肖像画のキャンバスをきっちり収めて、治療完了。
私はただうろうろと見守るだけで、もちろん猫の手ほどにも役に立たず、
(というか、手を出さない方がいいに決まってるというか、黙って見てろっていうか)、
手術室の前で祈りながら「手術中」のランプが消えるのを待っているようなものでした。

とはいえ、実際はそんな悲壮感が漂っていたわけでは決してなく、
先生は楽しそうに、軽快に、そして和やかに、治療にあたられていました。
重労働だとは思うのですが、そんなふうにはちっとも見えず、プロの技は鮮やかでした。
私もとっても楽しかったんですよ。

今回は肖像画自体のメンテナンスではなく、額縁のメンテナンスでしたが、
先生いわく「着物もちゃんとしたものを着せてあげなくっちゃね」とのことでした。
こうしてきちんと丁寧に対応していけば、絵画は30年、50年、100年と時を越えて、
次代に引き継いでいけるのだそうです。
修復・保存をきちんとしてこそ、安心して展示・公開によって皆さまに広く親しんでいただくことが
できるのですね。
縁あってお茶大にやって来てくれた木戸孝允肖像画、大切にしていきたいと思っています。

岡山からご足労いただいた大原先生に感謝しておりますのはもちろんですが、
今回のきっかけを作ってくださり、特別展直前の多忙な時期に、時間と場所をさいてご一緒に立ち会ってくださった(見てただけの私と違って、いろいろな道具を用意してくださったり、アドバイスもいただいた)
憲政記念館の担当者の方にも、大変にお世話になりまして心からありがたく思っております。



関連記事

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック